退屈な年末年始を乗り切るための一冊「サイバー・クライム」

サイバー・クライム
サイバー・クライム

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講談社 (2012-12-17)
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本書は、主にDoS攻撃と呼ばれるサイバー攻撃に対して、防御側であるコンピューターセキュリティの専門家の視点から描かれたノンフィクション作品です。

2部構成になっており、1部はカリフォルニアに住む天才的なコンピュータ・セキュリティ専門家、バーレット・ライアンにオンラインカジノサイトから脅迫を伴ったDos攻撃からの防御を依頼されるところから物語が始まります。

ハッカーからの攻撃を防ぎ切ったことをきっかけに、バーレット青年は同社の幹部との関係を深めていくのですが、このオンラインカジノサイト運営はマフィアが関与しているため、だんだんとダークな業界へと足を踏み入れていく過程が描かれます。

いつの間にやら裏の世界で名の通ったコンピューターセキュリティ技術者になってしまい自らの倫理観のはざまで葛藤するバーレット青年の苦悩など見どころ(読みどころ?)が沢山あり、まるで映画をみているようですが、あくまでノンフィクションすべて現実にあった話です。

しかし、ハッカーやマフィア、FBIといろいろな人物が入り乱れ、また出てくる登場人物がみな魅力的(マフィアの関係者さえ)でキャラが立ちまくっているので、読んでいる間は事実であることを忘れてしまいそうになります。

第2部は、バーレット青年から情報提供を受けた英サイバー犯罪対策庁捜査官のアンディが、謎のハッカーを追って「ネット犯罪大国」ロシアでの捜査の過程が描かれます。

英国から遠く離れたロシアの地に単身乗り込み、現地の捜査官と友好を深めながらハッカーを追う姿は、まるでハードボイルド小説を読んでいるかのようです。

あくまでノンフィクションですので、全てがうまく行って胸がすくような大団円というわけにはいきませんが、良質な映画を見ているような面白さを持った作品ですので、年末年始が暇でしょうがないという方は是非、これを機会に読んでみてはいかかでしょうか。