「地理的プロファイリング」感想
TwitterのTLをぼーっと眺めていたら下記ツイートを発見しまして、ちょうど今読んでいる本の内容と被っていたので、紹介させていただきます。
何が問題になったかというと、Transport for London (TfL)でオープンデータとして公開されたレンタサイクルの移動データに顧客コードが付いていて、長期間のデータを可視化すると個人識別可能になってしまうということだった http://t.co/MfYQctnCTn
— Naoyuki Ito (@ito_nao) June 5, 2014
それはデータにアクセスする誰かが、「ロンドンの市内を特定の時間に旅行した個々のサイクリスト」の情報を抽出することができ分析することができることを意味します、そして、ほんの少しの努力で、旅行をした実際の人々を見つけることができます。
おぉ、まさに地理的プロファイリングによってプライバシーが侵害されてしまうかもという事例。
地理的プロファイリングとは
北大路書房
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「羊たちの沈黙」で火がついて以来、日本のミステリーや刑事ドラマでも一時期やたらと「プロファイリング」がもてはやされた時期がありました。最近あまり見かけなくなりましたが。
大概の場合、「お前は犯人よりも危ない奴なんじゃないか?」みたいな捜査官が出てきて、犯人の心情に同化しながら犯人像に迫っていくのがお約束となっていたりします。
本書では、まず「プロファイリング」の詳細な説明から入るのですが、プロファイリングという技術が、正常なんだか異常なんだか分からないような捜査官の職人芸に依存したものではなく、「過去の犯罪データを統計学的に分析し捜査に役立てよう」という学問であることが分かります。
(正確には、アメリカで生まれた心理面から犯人像を推測しようというのが臨床的プロファイリング、イギリスで生まれた犯人の行動パターンを統計学的に分析し推測するというのが統計的プロファイリングと分類されているそうです)
そういったプロファイリングの中で、地理空間情報に注目して犯人の居場所や生活空間を推測しようというのが「地理的プロファイリング」となります。発案者は著者のキム ロスモさん。
現在では、FBIの捜査手法にも正式に取り入れられ、専用のソフトウェアなども開発されているそうです。(FBIではGISの講習会などもあるそうです)
海外ドラマがお好きな方なら、「NUMB3RS」のシーズン1第一話で主人公である天才数学者チャーリーが犯人の居場所を突き止めるのに使用したのがまさに地理的プロファイリングです。
(ちなみにこの第一話は、キム ロスモの実際のエピソードをそのままドラマの脚本として使っているそうです。)
地理的プロファイリングの概要を簡単に説明すると、犯人の行動パターン(多くの犯人は、自分の自宅のすぐそばでは事件を起こさず、また、土地勘がないほど遠く離れた場所でも事件は起こさないなど)を数理モデル化し事件発生場所をプロットした地図を使って、犯人が潜んでいる確立を各エリア毎に計算しヒートマップとして描いていく技術です。
面白いのは、概念としては理解するのにさほど難しくなく、技術的にもさほどハードルの高いものではないのですが、いろんなことに応用できそうな技術であるというところでしょうか。(野良猫の生息場所とか探すのにも使えそう)
ただ、上記ツイートにもあったように「レンタサイクルの移動データで個人識別ができてしまった」などプライバシーに関わることでもあるので、今後データを公開する際には気を付けなくてはならないですね。
関連書籍
「地理的プロファイリング」本はなかなか手に入れにくいのですが、「NUMB3RS」に出てくる数学を解説した「数学で犯罪を解決する」という本の第一章で地理的プロファイリングについて、結構詳細な説明があるので、興味のあるかたはそちらを読んでみてはいかがでしょう。
(「地理的プロファイリング」のKindle版は洋書になるので注意)
ダイヤモンド社
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